清明 祐子社長 「分からない時は人に助けて貰えばいい」|謙虚な姿勢を忘れずチャンスを掴み続けた経営者のキャリアに密着

2024年4月11日に銀座で開催された『上場企業特別講演〜トップ経営者が語る光(成功)と影(ハードシングス)~』。

今回は女性経営者として歩んできた軌跡を語っていただいた特別講義の様子をレポートします。

今回のゲストは、マネックスグループ株式会社 代表執行役社長CEO、マネックス証券株式会社 取締役社長執行役員の清明 祐子(せいめい ゆうこ)さん。マネックスグループは、常に変化をし続ける未来に向けて、最先端のIT技術と、グローバルで普遍的な価値とプロフェッショナリズムを備え、新しい時代におけるお金との付き合い方をデザインすると共に、個人の自己実現を可能にし、その生涯バランスシートを最良化することを目指す、金融商品の取引を行う企業です。2000年には「東京証券取引所マザーズ市場」上場。

今回は33歳という若さで社長に就任し、日本を牽引する女性経営者となった清明社長とファシリテーターの漆沢 祐樹(株式会社パーソナルナビ代表取締役社長)が対談形式でお話を伺いました。

01 Start up
~20代から培ったワークスタイルとは~

若くして証券会社を傘下とする企業の女性社長となった清明さんが、キャリアのスタートとして就いた職業は銀行員でした。銀行員時代の清明さんは「とにかく仕事仕事仕事という感じでやってきました。」と20代だった頃の仕事ぶりを振り返ります。

銀行員の総合職として勤めていた清明さんですが、当時の総合職は9割が男性で、取引先から女性だと煙たがられることもよくあったそうです。しかし、そんな状況を「むしろここからは上しかない」とポジティブに捉え、女性が担当であることに嫌な顔をする取引先に対しても、「むしろ嫌がらせのように毎日通い続けた」とユーモアを交えて話しました。その甲斐もあり、通い詰めていた取引先から認められることが多くなり、常に営業では優秀な成績を収めることができていたそうです。

逆境を前にしても決して諦めず、むしろその状況を「チャンス」と捉えてポジティブに行動し続けた清明さんのメンタリティが感じられる20代の頃の秘話を伺うことができました。

02 Growth
今の立場に至るまで

次に漆沢から、「今の清明社長の考え方や仕事への向き合い方に影響を与えた出来事」について質問がありました。

清明さんは、キャリアを築いていく中で、入社して2年目で社長に就任するという決断力や、現在における仕事のスタイルを確立した要因として、両親の教えが大きく影響していると話しました。

「父は『あなたの人生はあなたにしかデザインできないのだから、自分で考えて行動しなさい』という教えだったので、幼少期から門限や習い事など全てにおいて自分で決めて行動する習慣がつきました。反対に、母は『自分ひとりで生きていくのは難しいから、いつも笑顔でとにかく人に助けてもらいなさい』という教育でした。その教えもあり、何か自分の前に決断しなければならない物事があった時は、“できるかできないか”ではなく、“そもそも全てを自分ひとりでやりきることはできない。分からないことは人に助けてもらいながらやっていこう”という考えに従って決断してきました。何事においても、まずは即決断して行動することを続けてきました。」

清明さんは人生について、「何事も決めた時点ではその決断が正しいかどうかは分からないため、まずはやってみることが大切。決断をして行動した先に、また分かれ道が立ちはだかり、そこでまた決断をする。人生はそれを繰り返しながら自分の行きたい方向に持っていくしかない。」と話しました。

清明さんの決断力と行動力、そして負けで終わらせない成功への執着心が今のキャリアを創ってきたのだと感じさせられるお話でした。

03 Hard things
変化こそが会社を成長させる

清明さんは、会社を成長させる上で“これまでの形にこだわらず、柔軟に変化させていくことの重要性を語りました。その言葉通り、清明さんは社長を任命されて以降、これまでの常識にとらわれず様々な変革を起こしてきました。

清明さんはまず初めに、「みんなが気持ちよく働くためにはどうしたらいいか」を考え、報酬制度を見直し、自分よりもプレーヤーの方が稼げる仕組みを作り、1年で赤字だったところを黒字化し、2年で累積赤字まで解消させました。そこからグループ会社の中で清明さんの存在感が増し、かつてグループ会社の社長を務められていた松本 大氏から親会社の社長を任命された経緯があります。

その後も、これまで創業者の松本氏が作り上げてきた歴史ある会社のイメージに捉われず、新しいマネックスを創り上げるべく、大胆かつ人に寄り添った変化を加えてきました。清明さんは当時を振り返り「大きく変えることをしなければ廃れていく、常に新しいことをやりアップデートしていかなければならない」と話しました。また、清明さんは大きな変化を起こす上でもう一つ大事になってくることとして、「人を巻き込むこと」だと話しました。その中でも「自分ごととして考えられる人をどれだけ作れるか」が人を巻き込む上での鍵になる、と自身の信念を語ります。

清明さんの持つ『リーダーシップ』とは、単に成果を追い求めるのではなく、いかに社員の心を動かし、共に未来を創り上げるかに重きを置いています。結果として清明さんは、業績の回復や組織の活性化といった目に見える成功を収めただけでなく、長期的な成長基盤となる企業文化そのものを再定義に貢献しています。

04 Vision
大事にしたい考え

マネックスグループを支える4つのコアコンピタンス(企業風土)として、「多様性の尊重」「テクノロジーの活用」「イノベーションの追求」「グローバルな展開」というものが存在します。そこを軸にビジネス展開をしているため、清明さんは「会社を買収した後もグループ会社とはいえ名前を揃えたりせず、その会社の価値観や培ってきたものを尊重している」と話しました。つまり、その会社ごとに違う価値観があっても問題はなく、最終的にゴールさえ一致していれば多様性があってもいいという考え方なのです。

清明さんは、価値観が違う会社を統制するのは決して簡単なことではないが、その中で大事になってくるのはとにかく“対話”だと話しました。ここでも相手に歩み寄り、徹底的にコミュニケーションをとっていく、その中で企業理念などで最終的なゴールを一致させていけば多様性を失うことなく協力関係を築いていけるといいます。

また、今後の展望としては資産運用やM&Aを中心に会社を成長させ、全ての根源となっている“人”を大事にした人的資本経営をしていきたいと話しました。

2024年1月から始まった新NISA

05 Message
~20代・30代の方へ~

最後に質疑応答の時間が設けられ、何名かの参加者からの質問に清明さんが回答していきました。

30代男性参加者からの「役員を決める基準や、人を採用する基準はどのように決めているのか」という質問に対し、清明さんは役員を決める基準としては「自分で課題を設定して、自分で課題解決提案ができるかどうかが重要であり、その際に年齢や性別、国籍も関係ありません。ゴール設定をしてそれをどうアウトフォーミングするのかや、人をまとめる立場としてコミュニケーション能力や、相手の立場に立って考えられるかなどのソフトスキルを重視しています。」と答えました。さらに、人を採用するにあたっては「どこのポジションを任せるかにもよりますが、幹部的存在として期待して採用する際に意識していることは、“待ち姿勢ではない人”を選ぶようにしています。」と答えました。

最後に、清明さんから若者に向けてお言葉をいただきました。

「自分は決して輝かしい人生を送ってきたわけではありません。今の自分があるのは、目の前のことを地道にやってきただけです。ただ、目の前に来たチャンスは全部とってきました。できないかもしれないけど、できないことは頼ればいい!一歩でも、半歩でもいいから前に出てみる、そういうのを繰り返していくといつか大きなものに変わっていきます。チャンスがあればありがとうと言って取り、分からなければ助けてくださいと言って周りを頼ればいいんです。」

終始笑顔で明るく話をしてくださった清明さん。常に謙虚な姿勢で人と接する姿や、チャンスに対する決断力と行動力、そして常に相手の立場に立ち歩み寄る人柄こそが今の清明さんを創り上げてるのだと感じさせられる時間でした。何かを成し遂げる上で一番大事になってくるのは、特別な何かなのではなく、目の前にあることを大切にし丁寧に積み上げていくことなのかもしれません。

マネックスグループ株式会社は多様性を大切にし、従来の考え方に捉われず常に変化し、未来に対して視野を広く持っています。清明さん率いるマネックスグループの今後の活躍から目が離せません。

ライター経歴
吉沼
吉沼
株式会社パーソナルナビメディア事業部。
キャリアアップメディア『THE CAREER』
のインタビュアー兼ライター。
四年制大学で語学系の学部を卒業後、大手アパレル会社に勤務。

退職後は営業や、人材•教育業界にて20~30代を中心にキャリアアップ支援事業を行っている。
会社概要

【会社名】
マネックスグループ株式会社

【事業内容】
金融商品取引業等を含む会社の株式の保有

【代表氏名】 
清明 祐子(せいめい ゆうこ)

【代表経歴】
1977年生まれ。大阪府出身。
2001年京都大学 経済学部卒業後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
2006年にMKSパートナーズ(プライベート・エクイティ・ファンド)の参画を経て、2009年2月にマネックス・ハンブレクト(2017年にマネックス証券と統合)に入社し、2011年に同社社長に就任。
2019年4月よりマネックス証券代表取締役社長(現任)、2020年1月マネックスグループ代表執行役COO(現任)、2021年1月よりCFO兼務。


【本社所在地】
〒107-6025
東京都港区赤坂1-12-32
アーク森ビル25階


【企業HP】
https://www.monexgroup.jp/jp/index.html

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