江口 康二さん 「ベンチャーこそ世界で戦え!」|米国NASDAQ市場上場を果たした経営者のキャリアに密着

2024年7月16日に銀座で開催された『上場企業特別講演〜トップ経営者が語る光(成功)と影(ハードシングス)~』。今回は、盛況だった講義当日の様子をレポートします。

今回のゲストは、株式会社メディロム 代表取締役CEOの江口 康二(えぐち こうじ)さん。
株式会社メディロムは「ヘルスケア総合商社」を標榜し、世の中の数あるヘルスケアメソッド、商品、サービスの中からベストな組み合わせをユーザースタイルに合わせて提供し、愛と思いやりに溢れた社会の実現を目指す企業です。2020年には「米国NASDAQ市場」上場。
今回はコロナ禍にも関わらず世界に進出し、NASDAQ市場上場を果たした江口社長とファシリテーターの漆沢 祐樹(株式会社パーソナルナビ代表取締役社長)が対談形式でお話を伺いました。

01  Start up
〜リラクゼーション業界に参画するまで~

江口さんは元々自動車産業に勤めていましたが、ある日ぎっくり腰になってしまったことがきっかけで、整骨院や整体院やリラクゼーションに通うようになりました。

そこから、健康業界に着目し始め、リラクゼーション業界では顧客の健康データがカルテとしてしっかり管理されていることに驚いたといいます。ヘルスケア業界では、ユーザーが名前や住所、電話番号、既往歴、アレルギー、喫煙、飲酒など、生活習慣に至るまでのデータをこんなにも簡単に渡していることに気づき、これを統計データにすればいろいろなことが見えると考えました。

例えばこれらのデータがあれば喫煙率の変化、年代別の悩みや、健康状態など、顧客の生活週間や健康の変化が見えてきます。しかし、それを全く活用せずにカルテとして置いてあるだけであることに気づき、それをうまく活用できないか考えました。

そして、「ヘルスケア業界なら店舗を作れば作るほど来店というページビューが発生し、リピーターとして来店する人が増えれば経年変化が見える」ということを発見し、このビッグデータを活用すればユーザーに対して新しいエクスペリエンスを提供できると思い至りました。

そうすれば、ここから新たにリアルのメディアを作っていくことができ、さらにヘルスケアのビッグデータを持てれば必ず世界に勝てるということを確信しました。

02 Hard things
~上場までのストーリー~

2020年、新型コロナウィルスの拡大により、江口さんの会社は経営危機に陥りました。

全店舗をクローズせざる終えない状況でしたが、それでも従業員への給料は支払わなければならない上、運転資金なども考えると月間3億円は必須という状況でした。店舗を運営できない中では当然売上はゼロのため、銀行からの融資を受けるほかありませんでしたが、銀行側は「前例のない事態が発生しているから様子を見ましょう」という返答で事業を継続するための資金を調達することができませんでした。

当時リラクゼーション業界への補助金は充実しておらず規定により100万円しか受け取ることができませんでした。
そのタイミングで2社から買収の話もあり「社員を守るのか自分の権利を守るのか」という究極の質問を投げかけられることもあったと話しました。
それでも江口さんは「社員も自分の権利も両方とも守る」という意志を固く持っており、コロナ禍でまず社員に宣言したことは「誰も解雇はしない」という全員の雇用を守ることでした。

江口さんは例え売上がゼロで、毎月燃えているお金が3億円ほどあり、資金的にかなり厳しい状況にあったとしても、諦めることなく前向きの姿勢を崩しませんでした。

そんな中、江口さんが考えたのはNASDAQ市場上場でした。その提案に対して役員陣も前向きに承諾し、その後NASDAQ市場上場を目指し、アメリカの監査法人やアンダーライターと交渉を重ね、わずか8ヶ月で目標を達成しました。その結果上場により14億近い資金を調達することができ、会社を存続させることができました。

03 Core businesses
~3つの主力事業~

江口さんは現在、リラクゼーションサロン事業「Re.Ra.Ku」、ヘルスケアアプリ事業「Lav」、無充電デバイス事業「MOTHER Bracelet」の3本柱で事業を展開しています。

1つ目は、関東県を中心に東京No.1の店舗数で展開するリラクゼーションスタジオ「Re.Ra.Ku」です。施術とコミュニケーションを通し、一時的な癒しではなく、疲れのない身体を目指す健康管理を目的としています。独自のメソッドである「肩甲骨ストレッチ」を中心に、筋肉に負担をかけず柔らかくすることで、首肩腰などの疲れを緩和し、疲れにくい体づくりをサポートしています。近年では、あらゆる施設やコンテストにおいても数多く受賞するほどのトップクラスの品質と顧客満足度を誇り、実績で店舗数を拡大しています。

2つ目は、人々の健康を守るためには生活習慣にまで介入する必要があると考え、「Lav」を自社開発アプリとして展開しました。このサービスはチャットを通して、専属コーチが生活習慣の改善を支援するというサービスで、アプリ上で簡単に生活習慣を記録することができます。さらに、最大の特徴としては好きなコーチを自分で選択することができ、そのコーチがマンツーマンでチャットサポートをしてくれるので、モチベーションが保たれやすく、完走率は驚異的な98%という数値を叩き出しています。こちらのプログラム費用は保険者(保険組合)から支払われているため、ユーザーは無料でサービスを受けることができます。それでも平均減量数値としては、2ヶ月間で2.7kgの減量実績があり、最大で11.4kgの減量に成功しています。

3つ目は、世界初の無充電デバイスである「MOTHER Bracelet」です。これは、睡眠量や質、心拍、体温、消費カロリーなどを測れるバイタルトラッカーとなっており、人間の体温による熱エネルギーを電気エネルギーに変換するという技術が搭載されています。さらに、モーター部分はソーラーパネルとなっており、熱発電と光発電の2系統の発電を利用しているので、充電のために着脱する手間を省くことに成功しました。
それだけではなく、江口さんはこのデバイスが消費者向けだけでなく、企業向けにもビジネス展開できるという着想を得ました。このデバイスを身に付けていれば、身に付けた人の健康状態を把握することができるため、その技術を介護や運送業、製造業、国防などの現場で活かすことで、社会問題を解決することを目指しています。

日本の介護業界は少子高齢化により、今後更なる人手不足が問題となってきます。そこで「MOTHER」を活用すれば、介護事業者や離れて暮らす家族などが大切な人の見守りを可能にし、ICT導入により他業務に時間を充てることが可能になるため、夜間の業務軽減も期待できます。
運送業や製造業においては、社員の健康管理を徹底することで業務の効率化を図り、有事の際の早期発見にも繋がります。
さらに、防水性など強度の面でも優れているので、国防業界では、過酷な環境下でも無充電のため常に隊員の体調を把握することができ、さらに計測データは自社サーバに直接繋ぎ込むことができるため、情報漏洩防止などのセキュリティ面でも安心できます。

04 Message
~ベンチャーこそ世界で戦え~

江口さんは、「ベンチャー企業こそ世界で戦うべきだ」と話します。世界で戦ってみたからこそ分かった世界観や、今まで想像もしていなかった世界的企業との取引実現、国内にとどまっていたとき時には関わることのなかったような人たちと仲間になれたことなど、世界に出ることによる可能性について語られました。

その中で江口さんが現場で感じたこととして、「日本企業の交渉の場で話を持ち帰る文化」について言及しました。江口さんはアメリカでビジネスをしてきた経験を踏まえて、世界でビジネスをしていくのであればこの文化は適していないと指摘しました。日本企業の多くは、交渉の場に決裁権を持った人が直接出向くのではなく、決裁権のないただ英語が話せる人材を交渉の場にアテンドすることが多いと話しました。しかし、それでは結局話が進まないため、相手からしたらスムーズなやり取りができない印象が強く、日本人お断りとしている海外の企業も存在するといいます。反対に、海外では決裁者が自ら参加して、その場で決断して合意することが多いので、ビジネスにおけるスピード感が全く異なるそうです。

また、海外でビジネスをする中で、現地の日本人コミュニティとの繋がりを重視するのではなく、現地コミュニティに直接飛び込み、現地の人とのやりとりを大事にするべきだとアドバイスしました。

05 Vision
~今後の展望~

江口さんは、今後の展望として宇宙開発を目指しており、その中でも宇宙空間に製薬工場を作ることを理想としています。この宇宙開発というところにもヘルスケアの軸がしっかり通っており、いくつかの論文によると無重力空間では重力と遠心力の影響を受けないため、地球上では作れない新しい化学合成式を作ることができるといいます。それを利用して、世の中にある特定の病を治療するための製薬を開発できる世の中を創りたいと話しました。

実際に地球上では無重力の環境は20秒しか作り出せないと言われているので、宇宙空間にその製薬工場を置くことができれば、新たな製薬を開発するためにじっくり時間をかけて研究できます。そのために、宇宙空間にそのようなプラットフォームを作り、それを研究に活かせるようになれば、将来的に難病と呼ばれる病に対する特効薬の開発ができると話しました。江口さんはこのように、世界にとどまらず宇宙への可能性も視野に入れながら、人類への大きな貢献を夢見ていました。

今回は、自身の経験から枠にとらわれず広い視野で未来を描く江口さんのお話を聞くことができました。いくつもの前例のない挑戦を積み重ね、それを形にしてきた信用と信頼を元に、今後世界のヘルスケア業界に革命を起こし、更なる飛躍を実現していく姿に目が離せません。

ライター経歴
吉沼
吉沼
株式会社パーソナルナビメディア事業部。
キャリアアップメディア『THE CAREER』
のインタビュアー兼ライター。
四年制大学で語学系の学部を卒業後、大手アパレル会社に勤務。

退職後は営業や、人材•教育業界にて20~30代を中心にキャリアアップ支援事業を行っている。
会社概要

【会社名】
株式会社メディロム

【事業内容】
スタジオ運営・開発事業  / ヘルスケア研究事業
ヘルステック事業 / 派遣・教育事業 / フランチャイズ事業

【登壇者氏名】 
江口 康二 (えぐち こうじ)

【登壇者経歴】
1996年4月
株式会社ジャック(現株式会社カーチスホールディングス)入社
1999年12月
株式会社プライスダウン・ドット・コム専務取締役
2000年7月
株式会社リラク(現株式会社メディロム)設立
代表取締役(現任)
2010年6月
一般社団法人日本リラクゼーション業協会理事(現任)


【本社所在地】
〒135-0091
東京都港区台場2丁目3−1 トレードピアお台場16階


【企業HP】
https://medirom.co.jp/

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