藤森 義明社長 「みんながリーダーであるべき」|“20世紀最強の経営者”の意志を継ぐ経営者のキャリアに密着

2023年10月30日に銀座で開催された『上場企業特別講義〜トップ経営者が語る光(成功)と影(ハードシングス)~』。

今回が第二回の開催となった特別講義の様子をレポートします。

今回のゲストは、日本オラクル株式会社、取締役会長の藤森 義明(ふじもり よしあき)さん。日本オラクルは、アメリカに本社を置く外資系IT企業で、時価総額1兆円を超える日本を代表する大企業だ。1999年には店頭市場へ株式を公開し、2000年に「東証一部(現在:プライム市場)」への上場を遂げている。

クラウドソリューション業界をリードし、「商用Databaseの世界市場シェア No.1」を誇る日本オラクル。取締役会長の藤森さんとはどんな経歴の持ち主なのか?経営に対してどんな想いを抱いているのか?ファシリテーターの漆沢祐樹(株式会社パーソナルナビ代表取締役社長)が対談形式で藤森会長のキャリアについて話を伺った。

01 Start up
GEの役員になった理由わけ

過去から現在に至るまで、数々の大手企業の代表取締役や社外取締役に就任してきた藤森さんがはじめて役職に就いたのは、あの発明家トーマス・エジソンが創業者である「GE(ゼネラル・エレクトリック・カンパニー)」です。元々、日本の大手商社「日商岩井(現:双日)」に務めていた藤森さんが「なぜアメリカという舞台を選んだのか」その経緯と真相について漆沢が質問しました。

「私が日本の商社からGEに移籍した理由は、非常にシンプルです。日本で働いていた時に「アメリカでアメリカ人と戦い、そして勝ちたい」という気持ちが芽生え、GEへの転職に踏み切りました。

GEは当時、毎年「企業価値1位」「世界で最も賞賛される会社」に認定される“世界で最強の会社” と言われていました。当時のCEOはジャック・ウェルチと言って、“20世紀最強の経営者”と呼ばれていた男でした。彼は本当にその名の通りで、彼がCEOを務めていた20年間は売上・利益共に連続で2桁成長を遂げる功績を残していました。私は彼に育てられ、現在経営論やリーダーシップ論を編み出しています。

ジャック・ウェルチの経営のすごいところは、人が「ここまでならできるだろう」と想像しているレベルの3倍程の仕事を与えるところです。私がそんな彼から最初に大きな仕事を与えられたのは、GEに入社して3年目の38歳の時でした。与えられた仕事は、グローバル規模の技術・製造・営業の全てを任される医療機器の一部門のジェネラルマネージャーという役職でした。渡米したばかりで、部下を1人ももったことのない段階から一気に500人ほどの部下をまとめる役職を任されるとは想像もしていませんでした。

人は本来、「このくらいならいけるだろう」と自分の限界を決めているものです。ですが、その3倍の仕事を与えられると、最初に定めていた限界の2.5倍くらいの力を発揮することができるのです。アメリカは、やってできなければそこで終わりという厳しい世界です。初めてから100日で学びきり、勝ち抜き戦を勝ち続けなければ生き残れないという現実と日々戦っていました。」

アメリカという新しい舞台で、与えられた責任の大きな仕事に対して「できない」と諦めるのではなく、「チャンス」と捉え、自分のポテンシャルを高め続けてきた藤森さんのスケールの大きな過去のお話を伺うことができました。

02 Growth
日本と海外の人材教育の違い

次に漆沢は、日本企業と海外企業のどちらも経験した藤森さんに「日本と海外の人材教育の違い」についても尋ねました。

「私はアメリカに渡ってから「ダイバーシティ教育」と「リーダーシップ教育」の二つを学びました。「ダイバーシティ教育」では、今もまだアメリカに残っている黒人差別や女性差別の問題をなくしていくための教育をうけました。

二つ目の「リーダーシップ教育」ですが、リーダーのイメージは何となく湧くものの、リーダーシップとは一体なんだ?と辞書を引くくらい考え込んでしまいました。そのときに、日本でのリーダーやリーダーシップについての教育が浸透していないことに気が付きました。私はリーダーとは何か、リーダーシップとは何かを考えることは素晴らしいことであり必要なことだと思います。

明確な答えはないですが、「リーダーとマネージャー・経営者の違い」について学び、リーダーとは何か学びました。マネージャーや経営者は、力をもって自分の成し遂げたい事業のために部下に指示をして動かすのが役割です。それに対してリーダーは、地位をもちません。自分の考えをみんなに理解してもらい、影響力をもって人を動かすのが役割です。

日本ではリーダーは1人だけというイメージがありますが、私は、100人いたら100人がリーダーであるべきだと考えています。一人ひとりが影響力をもって「ここを目指したい」と発信し、周りを動かすことのできる人材であるべきだと思います。目指すべき場所にみんなを連れていくのがリーダーであり、その上のビジョンとパッションを掲げるのが経営者というのが私の考えです。」

「リーダーとはなんだと思いますか?」という冒頭の漆沢からの投げかけの時には考え込んだ様子の会場の参加者の表情も、藤森さんの答えで納得の表情に切り替わったのが伝わりました。

03 Hard things
LIXIL誕生の秘話

日本GE代表取締役会長兼社長兼CEOを務めた後の、住生活グループ(現:LIXIL)代表執行役社長兼CEOに就任した際の背景と藤森さんが最初に行ったことについて伺いました。


「LIXIL創業者の長男である潮田洋一郎さんが「会社を思い切り変えたい」ということで、外部から経営者を立てることになり私が経営を任されました。引き継いだ当時は、LIXILという社名ではなく、TOTOやINAXなどの生活にまつわる会社がいくつかグループになっていた会社でした。それを全て統合して、「LIXIL」という一つのブランドに変えるところからのスタートでした。その次に会社を大きくするために、大規模な海外企業買収を行いました。」

続いて、約5年間で「LIXIL」のブランドを成長させた経緯とその際に大変だったことについて漆沢が質問しました。

「ブランドを作り上げることは、お金をかければ簡単にできます。印象に残るようなテレビCMや広告などにお金を使って一気に打ち出せば、認知度は80%ほど上がります。ただ、残りの10〜15%は、山奥に住んでいたりテレビがなかったりする暮らしの方なので、お金ではなく時間をかけるしかありません。なのでその細部の方面に関しては、実際にイベントを開催するなどして認知度を上げるための施策を実施していました。

そして私がもう一つブランディングで意識していたことは、社長である私自身がなるべく多くの新聞やテレビに出演するということです。元々、INAXやTOTOには技術力があったので、社長がメディアに出演することでブランド力が上がることに加え、社員もついて来るようになりました。演出やブランディングも大事ですが、まずはサービスや商品の質を高めることが大切だと私は思います。」

「LIXILの海外シェアを図るときに一番大変に感じたことは、やはり“人の壁”です。いくらグローバルといっても社員がついてこなければ意味がありません。「どうやったら人を動かすことができるのか」「人の気持ちはどう変えられるのか」という点はここでも試されることになりました。そこで私は、地方で働いてくれている営業マン、工場勤務の方一人ひとりに「努力すれば叶えられるチャンスがある」と伝え続けました。みんなにどれくらいの夢をもたせることができるかが経営者の力だと実感させられました。」

グローバル展開を目指す際に壁にぶつかっても『みんなの夢を共有してみんなで夢を創る』という気持ちと行動で、社員の心を動かした藤森さんのリーダーシップを感じることのできるお話でした。

04 Vision
経営者の視点

藤森さんの著書である『リーダーは前任者を否定せよ プロ経営者の仕事術』を熟読した漆沢から著書の中に記されていた【ベルカーブの心理】について質問しました。

【ベルカーブの心理】とは、経営者が何か変革を起こすビジョンを語った時の聞いている人の心理比率で、2割の人は共感しとても熱心に聞く『ファストフォロワー』であり、7割はもう少し聞いてみよう、様子を見てみようと思う『傍観者』、最後の1割は反発する『抵抗者』であるとされています。この比率を元に経営者としてどのような意識をもっているのか話を伺いました。

「この【ベルカーブの心理】の理論は、アメリカも日本も関係なくどこでも同じ比率です。例えば、今会場で話を聞いてくれている参加者の中でも同じ比率だといえます。最後の1割の人は色々な“気に食わない理由”をつけて最初から受け付けず、7割の人は聞いてみようかなくらいの気持ちでは構えていてくれているでしょう。

そこで大切なのは、2割の熱心になって話を聞いてくれる人を有効に使い、最後の1割の人を絶対に切らないことです。1割の人を諦めて一度切り捨ててしまうと、さらに反発者は増えていく一方なのできちんと時間をかけて説明して分かってもらうことが必要です。賛同してくれる2割の人を強化して、伝達の波を創り大きな影響力になってもらうということを意識しています。」

話のテーマは「変革の時期」について切り替わり、何かを変える時の危機感について経営者としての心境を伺いました。

「私にとっての危機感は「自分自身が現状ではだめだと思うこと」「意識的につくる危機感」の2つです。危機感は成長や進化に繋がる大切な意識だと思っています。

一つ目の「自分自身が現状ではだめだと思うこと」は現状に満足している人間よりも原動力ははるかに大きく、成長意欲は高くなります。二つ目の「意識的につくる危機感」はなにかというと、世界や日本中から自分よりも優れている人やものを見つけてくることです。自分よりもすごいものを見つけてくるということも一つの学びです。比べる対象を見つけることで今の現状を見つめ直すきっかけになり、新たなる目標ができます。」自分はこのままではだめだと思ったその時こそが「変革の時期」だと藤森さんは語りました。

05 Message
~20代・30代の方へ~

最後に質疑応答の時間が設けられ、20代女性参加者の方から「若者が夢をもてる社会になるためにどのように声をかけたら良いか」という質問に対して、藤森さんは「夢を語る機会をつくってあげることが大切」だと答えました。

「やはり夢を言葉に出すことが大切だと思います。某女子大学で講義をする機会があり、「あなたの夢はなんですか?」という話をしました。その講義の後に「改めて夢について考えました」「今まで夢について考えて来なかったことに気が付きました」という感想をいただいて、そもそも考える機会がないから夢を持てないんだと気が付きました。

夢ができると必ず行動が伴い、諦めずに叶えようとします。夢は大きければ大きいほど達成するものが大きくなり、長く自分を支えてくれるものになります。実は、日本は「夢を持てない社会」なのではなくて「夢を語らない社会」なだけだと私は思ってます。

自分を語らなければ、人を動かすこともできないので絶対に何も起こりません。どんな人でも、どんな大人でも恥ずかしいと思わずに夢を語って欲しいと思います。学校教育の場から「夢を語る社会」へ変革を起こしてほしいですね。」

講義の最後に夢について熱く語ってくれた藤森さん。質問者が多く、30分を超える質疑応答となりましたが、一人ひとりの質問に丁寧に答える藤森さんの姿は非常に印象的でした。

そんな藤森さんが取締役会長を務める日本オラクル株式会社は「日本のためのクラウドを提供」「お客さまのためのAIを推進」の2点を2024年の重点施策に掲げています。
未来に向かって躍進し続ける日本オラクルと藤森会長の今後から目が離せません。

toyoshima

インタビュアー 兼 ライター

株式会社パーソナルナビ メディア事業部。
四年制大学の教育学部を卒業後、都内小学校に勤務。
退職後は教育者の経験を活かし、20代~30代を中心にキャリアアップ支援事業を行う現職に就く。

会社概要

【会社名】
日本オラクル株式会社

【事業内容】
国内を拠点とした情報システム構築のためのソフトウェア・ハードウェア製品/ソリューション/コンサルティング/サポートサービス/情報教育の事業を展開している

【代表氏名】 
藤森 義明(ふじもり よしあき)

【代表経歴】
1951年生まれ。東京都出身。
1975年日商岩井(現 双日)に入社。1986年に日本GEに移り、1997 年米GEカンパニー・オフィサー、2001年にはアジア人初のシニア・バイス・プレジデントなど要職を経て、2008年、日本 GE 会長兼社長兼CEOに就任。その後、2011年に株式会社LIXILグループ 取締役代表執行役社長兼CEOおよび中核事業会社である株式会社LIXILの代表取締役社長兼CEOに就任。2016年6月までの約5年間にわたり、LIXILグループのグローバルな事業拡大をけん引した。2016年6月から2019年12月まで同グループ相談役。そのほかにも、過去に株式会社東芝 社外取締役、株式会社資生堂 社外取締役を務める。
現在は、武田薬品工業株式会社社外取締役、ボストン・サイエンティフィックコーポレーション社外取締役、日本オラクル株式会社 取締役会長、株式会社りらく 社外取締役、株式会社トライグループ 社外取締役を務めている。
東京大学工学部卒、米カーネギーメロン大学にて経営学修士(MBA)取得。カーネギーメロン大学ボードオブトラスティー。
著書に『リーダーは前任者を否定せよ プロ経営者の仕事術』がある。


【本社所在地】
〒107‐0061
東京都港区北青山2‐5‐8
オラクル青山センター


【企業HP】
https://www.oracle.com/jp/

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