酒井 将代表 「法律業界に変革を起こす」 |日本を代表する大手法律事務所の経営者が語るキャリアとは

今回お話を伺ったのは、
ベリーベスト法律事務所の代表弁護士を務める、酒井 将(さかい すすむ)さんです。

個人のお客様相手を対象とした法律事務所として国内最大手の『ベリーベスト法律事務所』の設立者である酒井代表の、法律業界の魅力と経営に対する想いについてお聞きしました。

【現在】お客様に寄り添い、成長し続ける法律事務所


—ベリーベスト法律事務所の特徴を教えてください


ベリーベスト法律事務所は、個人の法律問題から中小企業の法律問題まで扱う総合法律事務所です。個人のお客様と中小企業のお客様を対象とする法律事務所として日本で一番規模の大きい会社で、現在の拠点は、全国に73箇所あり、弁護士事務所の中で一番の拠点数です。地方都市にも展開しているため全国に多くのお客様がいらっしゃいます。

中小企業のお客様を対象とした法律問題に関しては、業界・業種ごとに専門部署を作って対応し、専門性の高いサポートを提供できる点が特徴です。法律問題を分野ごとに分けて専門的に取り扱う事務所はありますが、業界・業種ごとにチームを分けているのは非常に珍しいと思います。分かりやすくいうと、例えば、不動産業界の専門チームでは、不動産会社のクライアントの案件を集中的に取り扱っています。このように建設会社、運送会社、システム開発会社、Webマーケティング会社などの様々な業界・業種に対応する部署を作って専門的な法的サービスを提供できるというのがベリーベストの強みです。

また我々は、マーケティング力の強い法律事務所でもあります。普通の法律事務所は、個人事務所がほとんどで、顧客の紹介で新たな顧客を獲得することが一般的です。顧問の紹介の場合、弁護士は案件の種類を選べませんから、お客様や案件の種類はバラバラで、経験のない分野であれば所属する1.2名の弁護士がその都度文献を当たって調べるところから始まります。ベリーベストは、マーケティング活動に力を入れることで、現在の専門性の高いサービスの実現に成功しました。例えば、個人のお客様に対しては、交通事故の専門サイトを作ってリスティング広告で集客をかけるとします。そうすると、交通事故の依頼だけが集まるので、対応する弁護士は自然と交通事故の専門家に成長します。

さらに、案件を専門的に取り扱うことにより、弁護士の傍で働くパラリーガルの専門知識も身に着くため、秘書的な業務だけでなく、弁護士の指示のもと、実務にも携わることができるのも特徴の一つです。個人事務所ではなく、大きな組織という特徴を活かして、知識をつけてプロフェッショナルとして活躍する道や、役職を上げてマネジメントするポジションに就く道を選ぶことができます。勉強しながらステップアップをすることで、弁護士だけでなく、パラリーガル(法律事務職員)も、高いスキルや給与を目指すことができます。


— 経営の中で意識していることは何ですか。


お客様へ良いサービスを提供することを最優先にしながら、経営者として業務改善と利益最大化を常に意識しています。広告費などの経費を削減し、その分を従業員に還元することで、高い利益を生み出しています。当事務所では、広告での集客をメインにしていますが、広告から問い合わせ、法律相談までの流れを効率的に構築しています。広告や導線の設計についても、自分たちで細かく考えています。

法律相談に繋げるためには、お客様に「この事務所に依頼したい。」と思っていただけることが重要です。そのため、最初の電話に対応するパラリーガルやコールセンターの教育に力を入れています。弁護士は高い報酬をいただく仕事ですから、高いお金を払って依頼をしてくださるお客様に対して、適切で丁寧な対応ができる弁護士を多く育てるため、日々、品質管理室のメンバーと会議を重ね、品質向上を目指しています。

また、当事務所では、働いている人の人事評価も大切にしています。業務管理システムを使い、所属弁護士の案件受注率や担当案件数、売上など全てを見える化しています。頑張って成果を出した分だけ給与に反映する仕組みを導入しています。また、お客様からの弁護士の対応についてのアンケートも活用し、売上や満足度に応じて給与やボーナスに反映しています。人事評価の制度がしっかりとあることで、従業員のモチベーションも高まり、採用率も高くなっています。

【過去】厳しい状況を乗り越えた分だけ強くなる


— ベリーベストを設立した経緯を教えてください。


弁護士として、弱い立場の人を守りたいという思いから私は弁護士の道を選びました。司法試験に合格後、小規模な事務所で働いていましたが、一人で担当できる案件には限界があることを痛感しました。年間30~40件の案件しか担当できないため、生涯で担当できる案件の数は、約1000件程度です。担当したお客様からは感謝の言葉をいただけることは弁護士として非常にやりがいはありますが、社会全体から見ると自分がやっていることのスケールはまだまだ小さいのではないかと感じるようになりました。

そこから、もっと社会全体に大きな影響を与えることがしたいと考え、『弁護士ドットコム』という弁護士と依頼者を繋げるウェブサイトの立ち上げに参加しました。このプラットフォームを通じて、困っている人々が簡単に弁護士にアクセスできる環境を作ることができ、社会に貢献できていると実感しました。ただ、私が弁護士である以上、弁護士と依頼者を繋げるだけではなく、多くの人に自分のサービスを提供できる組織を作りたいと考え、2010年に「日本一の法律事務所を作る!」という思いでベリーベスト法律事務所を設立しました。

当時、弁護士業界はアナログで、IT化もマーケティングも進んでいませんでした。だからこそ、私は業界を変革できると信じ、Webマーケティングに注力し、個人のお客様を増やすところから始めました。企業は元々顧問弁護士を持っていることが多いため、アプローチが難しい側面があります。ですが、個人のお客様を増やすことで、事務所の規模を拡大し、専門性と実績を積み上げ、企業のお客様も獲得できる法律事務所に成長しました。


— 経営の中でどのような壁にぶつかりましたか?


この事務所を立ち上げた頃、最初の壁にぶつかったのはマーケティングでした。『弁護士ドットコム』を手放して事務所を立ち上げたので、マーケティング部門をゼロから構築する必要がありました。法律事務職員の素人集団が、なんのノウハウもないままマーケティングを学び始めたのですから、本当に大変でした。

事務所が軌道に乗ってからも、弁護士会との関係性に苦労しました。弁護士業界は、やや特殊で古い体質もあるので、出る杭は打たれるというように、業界の中で目立つ存在になるほどあれこれと対応に追われることが増えます。また、コロナの時期もとても苦労しました。厚生労働省がコロナ対応に追われたことにより、当事務所の主軸の一つであるB型肝炎給付金請求の支払いが遅れ、資金繰りの面で大きな影響を受けました。

ただ、厳しい状況を乗り越えた分だけ組織は強くなります。逆境を乗り越えることで、どんどん筋肉質な組織となり、成長するのです。逆に何の問題も起きていない時ほど、慢心していて足元を掬われてしまう危険があるので、調子がいい時ほど気を引き締めるべきだと思っています。

【未来】日本一の組織を目指して


— 今後の展望や目標を教えてください。


私たちは総合法律事務所として、企業法務のさらなる充実を図り、どんなクライアントのどんな事件でも対応できる組織を築きたいと考えています。現在、全国73拠点を展開していますが、まだ拠点を置けていない都道府県もあります。そこで、全国対応を目指し、日本中にリーガルサービスを提供できる組織になるため、引き続き努力していきます。

また、現在の規模は6番目ですが、近い将来には日本一を目指しています。規模だけでなく、サービスの質や、従業員・弁護士の待遇においても、日本一の法律事務所を目指しています。

私たちの目標は、あらゆる社会的問題や法的課題に対して良い解決策を提供できる組織を作り上げることです。法律問題を通じて、世の中の諸問題を一番近くで見ている立場だからこそ、「もっとこうした方が世の中は良くなる」という意見を発信していきたいと考えています。国会に対して改革や法改正に向けたロビー活動ができるくらいの、発言力を強めていきたいと考えています。

【SDGs】弁護士×SDGs


— SDGsと法律にはどんな関わりがあるのでしょうか。


弁護士の仕事の多くがSDGsと関連していると言えます。例えば、『1番:貧困をなくそう』では、債務整理・借金問題の取り扱い、養育費の回収、財務整理が当てはまります。『3番:すべての人に健康と福祉を』であれば、消費者被害救済や、空き家問題、B型肝炎給付金請求など、SDGsの17項目に該当する業務内容を挙げるときりがないほどです。

実際に、私たちベリーベスト法律事務所も、SDGsを意識した取り組みをいくつか取り入れています。具体的な活動でいうと、昨年、市町村ごとに配布される小学生のキャリア教育に役立つ副読本『小学生のためのお仕事ノート』で、弁護士の仕事について分かりやすく解説するなどの取り組みを実施しました。その他にも、模擬裁判、福利厚生の充実、産休育休、女性所員の多さ、障碍者雇用、クールビズ、ペーパーレス化など当事務所だけでも様々な取り組みを進めています。

【若者へ】挑戦することで道は見つけられる


― 若い世代の方々へメッセージをお願いします。


「自分にどんな仕事が向いているか」これは、挑戦してみて初めて分かります。はじめは分からなくて当たり前なので、まずは恐れずに様々なことにチャレンジする姿勢を大切にしてほしいです。様々な経験を積んだ先に、ようやく自分に向いているものが見つかります。実際にやってみないことには、想像通りかそうでないかは分かりません。若いうちに想像で好き嫌いをせず、勇気を出して"未知の世界"に飛び込んでみてください。

実は、「自分が何をするべきか分からない」という方には『法律事務職員』はとてもおすすめな仕事です。法律事務所は、世の中のあらゆる事象を取り扱う場所です。法律事務所で働くことにより、世の中で起きている様々なことを勉強することができます。仕事を通して、これまで自分には縁のなかった事件や犯罪に日常的に触れ、社会生活上の知恵を身につけることができます。また、あらゆる業種業態の企業様とも関わるので、今まで知らなかったビジネスモデルを知る機会もあり、自分の興味関心を広げるきっかけになるかもしれません。

学生の方や若い方は、自分が何をしたいか分からない人も多いと思いますが、法律事務所で働くことで、本当に自分がやりたいことを見つけることができるかもしれません。また、法律事務所の仕事は、困っているお客様に寄り添って悩みを解決していく仕事なので、感謝されることも多く、大変やりがいのある仕事です。是非、多くの学生の方や若い方に、法律に関わる仕事を志望してほしいと願っています。


酒井代表へのインタビューを終えて

今回、酒井代表にインタビューをさせていただいて、ベリーベスト法律事務所の特徴や、酒井代表の経営や従業員に対する想いについてお話を伺うことができた。

「弁護士に相談する」というと、ハードルが高いと感じる方も多い。問い合わせた先で、突き放されたり、上から目線で対応されたりしたら、依頼したくないと思うのが当然だろう。ベリーベスト法律事務所は、そんな不安を抱えた顧客の気持ちに寄り添い、対応の品質向上を常に目指している。最初の対応だけでなく、解決までの過程でも、親身になってサポートする教育が、ベリーベストの規模を大きくしたのだと納得した。

法律は世の中のあらゆる事象に関わっている。法律の業界に触れてみると、知らなかった世界や自分の可能性を発見することができる。イメージや想像だけで、新しい世界に挑戦することをためらうのではなく、まずは経験してみることが、自分の進むべき道を見つける近道なのではないだろうか。

toyoshima

インタビュアー 兼 ライター

株式会社パーソナルナビ メディア事業部。
四年制大学の教育学部を卒業後、都内小学校に勤務。
退職後は教育者の経験を活かし、20代~30代を中心にキャリアアップ支援事業を行う現職に就く。


事務所概要

【事務所名】
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices

【取り扱い業務】
・法人のお客様向け
顧問弁護士、企業法務一般、コーポレートガバナンス、危機管理・不祥事対応、内部通報制度、M&A、企業再編、起業支援、新規上場(IPO)支援、ファイナンス、不動産建物明渡し、不動産法務、労働法務、労働紛争、債権回収、知的財産紛争、知的財産契約取引、特許・商標・意匠出願、エンタテインメント法務、事業再生・倒産、一般民商事紛争、裁判外紛争処理、事業承継、タックスプランニング、税務訴訟、中国法務、米国法務、クロスボーダー取引、外国進出サポート、出入国関連・ビザ等、クロスボーダー紛争・海外訴訟対応、不動産・法人登記

・個人のお客様向け
離婚相談、遺産相続、交通事故、労働問題、残業代請求、不当解雇・退職勧奨、労働災害、債務整理、刑事事件、ネット上の誹謗中傷・風評の削除請求、不動産問題、建物明渡請求、B型肝炎給付金請求、アスベスト被害賠償金請求、基地騒音訴訟、医療事故、建築紛争、消費者被害、学校問題、税務訴訟、国際弁護サービス(英語、中国語)

【代表氏名】 
酒井 将 (さかい すすむ)
:東京弁護士会
浅野 健太郎 (あさの けんたろう):東京弁護士会
萩原 達也 (はぎわら たつや):第一東京弁護士会

【代表経歴】
1977年生まれ。東京都出身。
1995年 03月 慶應義塾高等学校 卒業
1999年 03月 慶応義塾大学法学部法律学科 卒業
2000年 11月 司法試験合格
2002年 09月 最高裁判所司法研修所(札幌地方裁判所配属) 修了
2002年 10月 弁護士登録(東京弁護士会所属)
2005年 07月 弁護士ドットコム株式会社(東証グロース6027)共同創業 代表取締役副社長 就任
2006年 05月 法律事務所オーセンス 開設
2010年 04月 弁護士ドットコム株式会社(東証グロース6027)代表取締役副社長 退任
2010年 12月 ベリーベスト法律事務所 開設 代表弁護士
2019年 10月 ベリーベスト虎ノ門法律事務所 開設
2021年 12月 ベリーベスト法律事務所 代表弁護士に復帰

【事務所所在地】
東京オフィス
〒106-0032
東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階

【事務所HP】
https://www.vbest.jp

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