キャリアに悩む女性たちが人生のロールモデルを見つけることを目的とした、i3 business academyが主催する女性会員限定の『女性勉強会』。
2023年11月から内容をリニューアルし、“女性マネジメントのプロ”として知られる、川崎 貴子さん(株式会社リントスの代表取締役)と、様々な業界で活躍する女性経営者のスペシャル対談でお届けしています。女性ならではのキャリア形成における悩みや不安を、人生の先輩として一緒に解決に導いていく内容となっています。
好評だった過去の『女性勉強会』の様子をレポートします!
今回のゲストは、株式会社エアトランセ 代表取締役社長の江村 林香さん。
多くの事業を経験され、公私ともに充実されている江村さんとはどんな経歴の持ち主なのか?中小規模の経営者が採用で求めていることとは何か?女性ならではのプライベートトークまで、江村さんと交流の深い、ファシリテーターの川崎さんがオンラインの対談形式で江村さんのライフキャリアについて話を伺いました。
01 Career Path
~江村社長のキャリアの原点と転機~
―川崎さんの進行の基、スタートした女性勉強会。冒頭は、江村さんご自身の経歴を語ってもらいました。
川崎:江村さんのキャリア経歴について教えてください。
江村:私は埼玉県大宮市で、5人兄弟の長女として生まれました。幼少期は裕福な家庭で育ちましたが、小学校6年生の時に父の会社が倒産し、一気に貧しい生活を送ることになりました。この経験が私のキャリアに大きな影響を与えています。
高校進学時、経済的な理由から私立の滑り止めを受けることができず、偏差値の低い高校に進みました。そこで学年一番になった経験から、努力するよりも、自分が一番になれる環境を選ぶことが成功への鍵だと気づきました。この考え方は、その後の私の人生の指針となっています。
大学進学時には筑波大学から推薦を受けましたが、家庭の事情で断念し、東洋の短大に進学しました。在学中に家庭教師のアルバイトを始めましたが、東大生の友人に比べて仕事がなかなか回ってこなかったため、自分が一番になれる市場を模索し、偏差値40以下の生徒を対象に絞りました。この方針が功を奏し、月に50万円以上稼ぐことができました。この経験で、学歴に頼らずとも、自分が一番になれる環境を作り出すことが成功に繋がると実感しましたね。
就職活動では、大企業を目指す同級生たちとは違い、社員3人の小さな会社に入社しました。そこでは営業や経理を含むあらゆる業務をこなし、数年後には取締役に昇進しました。その後、自身の会社を立ち上げ、音楽家の派遣事業や中古車ビジネス、さらには航空会社の設立など、さまざまな分野で事業を展開してきました。
私は、自分が直接業務に関わらないで済むような組織づくりを大事にしています。プロフェッショナルな人材に運営を任せるスタイルをとり、複数の事業を同時に展開しつつ、自分自身は経営に集中することができました。現在は、60歳での引退を視野に入れつつも、まだ事業に情熱を持って取り組んでいます。
川崎:航空会社を盛んに運営されていた時期は、ちょうど世界的な不況の最中でしたよね。そのような厳しい経営環境の中、どのような心構えで困難を乗り越えられたのでしょうか。
江村:航空会社を始める前は、渋谷のプール付きの家に住んでいたんですよ。でも、夫から『航空会社にすべてを注ぎ込むなら、今の生活を捨てる覚悟が必要だ』と言われて、家族でワンルームに引っ越しました。まだ、事業の展開も模索中だったけれど、不思議と『頑張ればまたプール付きの家に住める』と信じていましたね。
経営が大変な時期もありましたが、私にとって『悩み』というのはあまりないんです。悩むというのは、高学歴の人たちがすることだと思います。(笑)私は、悩む代わりに、どうやってその困難を乗り越えるか、解決策を考えるんです。悩むというのは、現実から逃げたいときに感じるものだと思います。でも、私は逃げるよりも、『どうやって乗り越えようか』と考えるタイプなんです。だから、悩むというより、考えるんですね。悩みがないというのは、こういうことかもしれませんね。
02 Unique Strategies
~独自の経営・営業戦略~
ー次に江村さんは、経営における独自の強みや視点について教えてくれました。
川崎:これまで取り組んできた事業の多さは、江村さんの大きな特徴だと思いますが、多様な事業に取り組む背景では、やはり常にアンテナを張っているのでしょうか。
江村:そうですね、常にアンテナを張っているというよりは、私のアプローチは「これがないから作ろう」という発想ですね。例えば、医療法人を立ち上げたのは、父が病院で処方箋をもらうのに一日かかってしまうのを見て、「もっと効率的なサービスがあればいいな」と感じたからです。そこで、自宅に訪問してくれるサービスを自分で作りました。
ドーナツの事業も、数年前から流行っている繁盛店のドーナツを自分が楽しめるようにしたいという思いから始めました。人気店で買うには並ばなければいけないじゃないですか。(笑)並ばずに美味しいドーナツを食べたいと思って、自分でドーナツ屋を開くことにしたんです。
日常の中で「これがあったら便利だな」という問題意識やニーズをもとに、自分で解決策を考えて事業を立ち上げることが多いですね。自分が直面した問題や不便さを解消するために、事業を通じて実現していくのが私のスタイルです。
川崎:これだけ多くの事業を展開されていますが、特に営業の精鋭を集めているわけじゃないですか。江村さんが考える営業のコツや、商品を効果的に売り込む方法、新しい人に惹きつけるためのアプローチについて教えてください。
江村:実は、、、私自身、営業が得意というわけではないんですよ。大事なのは、単に自分の顔や性格を売り込むことではなく、独自性を持った商品やサービスを提供することだと思っています。結局、「うちにしかないもの」を作って提供することが大切なんです。
営業では、製品やサービスの独自性を強調して「これがなければ困る」と思ってもらえるようにしています。接待や個人的な関係づくりが無いと売れない商品・サービスじゃダメなんです。営業に力を入れているというよりは、サービス自体をお客様に受け入れられやすいものに作り上げることに重きを置いていますね。
実際の営業の場でも、特に「お客様に気に入られる」ということは、あまり意識しない方がいいかもしれませんね。私の経験では、営業トークが得意な人よりも、真面目で準備が整っている人の方が実際に成果を上げやすいので。(笑)私の会社でも、口が上手な営業マンよりも、控えめでおとなしくても真面目に取り組む人が成功しています。
03 Recruitment Keys
~江村さんが考える採用のポイント~
―営業の話から、川崎さんから江村さんへ採用のポイントについて質問がありました。
川崎:江村さんが新しいメンバーを選ぶ際に重視している特性や、仲間として迎え入れる際の基準について聞かせてください。
江村:採用で最も重視しているのは、やはり真面目さですね。テレビや雑誌に出ていた時期があったのですが、「江村さんの鞄持ちをさせてください!」みたいな人は雇ってませんね。(笑)面接に慣れていて余裕があるような人はあまり採用しません。むしろ、面接に10分前にきちんと来て、少し緊張しながらも真面目に取り組む姿勢がある人が理想です。外見やおしゃれさよりも、真剣に働く姿勢が重要だと思っています。
川崎:余裕があって外見やおしゃれに気を配っている人材よりも、真剣に働く姿勢なんですね!理由が気になります。
江村:正直な話、中小規模の企業は大手ほど研修制度も就業環境も整っていないわけですよ。そんな中で、ハキハキとした人っていうのは大手でも内定が出るケースが多いんです。中小規模の企業の採用では、自己主張が強くて「これがない・あれがない」と問題提起するような人よりも、与えられた環境でしっかり働いてくれる方が好ましいです。基本的な信頼性と真面目さが特に重要だと感じています。当社では、おとなしい人が多い傾向がありますが、そうした基本的な姿勢をもっている人が長く続くことが多いです。
04 Communication & Partnership
~仕事にも通じる、夫婦のコミュニケーション術~
―プライベートでも交流のあるお二人は、パートナーのお話へ。
川崎:江村さんのご主人って、経営者のパートナーとして完璧だと感じる方なんですよね。江村さんが提示した結婚条件も非常に高かったという話をがあるのですが・・・(笑)。最初からご主人を良いと思っていたのか、それとも江村さん自身のビジョンに対してご主人が反応したのか、そのあたりについて教えていただけますか?
江村:そうですね(笑)。私が30歳を過ぎたくらいに、結婚について真剣に考えるようになったんですよね。それまでは仕事中心で、お金を稼いで予算を気にしない生活をしてて、それが急に結婚したいと思うようになりました。なので、結婚するには自分にはどんな人が必要かを研究しました(笑)。その結果、今の旦那が候補の1人になったんです。
実は、結婚する1年前には、私の理想に合った人が6人ほどいたんですよ。その中から最終的に選んだのが今の旦那です。最初はドラフト会議のように、どの人を選ぶか決めていなかったんですが、最終的には彼が一番合っていたという感じです。
旦那に対しては、結婚後に「結婚の条件クリアしてくれて、こんなに頑張ったのはすごいね!」と話すことが多いです。この話題になると決まって、旦那がいうのが「今の若い女性たちはもっと自分の欲しいものをはっきり言った方がいい」ということです。女性たちは、自分が欲しいものややってほしいことをはっきり伝えずに、察してほしいと思う傾向があると旦那は感じているようです。
川崎:確かに!私たちの世代は、男性が支払うのが当たり前だったり、男性が稼ぐのが普通でしたが、今の女性たちはそうではないですもんね。だから要求するのが苦手な子が多いのかも。
江村:男性は、女性から具体的な要望があれば、それに応えようとすることが多いですよね!自分の期待を言わないと、男性は気づかないんです!私たち一人ひとり育った環境が違うんだから、察してほしいと期待するのではなく、自分の要望をはっきり伝えることが大切だと思います。これは、女性の皆さんに覚えておいて欲しいですね(笑)。
川崎: 女性にありがちですね。プライベートだけでなくて、仕事でも!自分の意見や要求をはっきり伝えることって大事ですよね。特に仕事では「これをこうした方がいい」って言うことも重要だし、上司は結果で評価することが多いから、自分の努力が見えにくいときもありますよね。
江村: そうなんですよ。上司はもちろん結果を重視しますし、夜中まで頑張っている過程まではなかなか見えないことが多いんです。特にリモートワークや営業職だと、その努力が見えにくいですからね。女性は「頑張りを褒めてほしい」と思うことが多いけど、実際には結果にコミットして、自分の成果をしっかり示すことが大事です。
川崎: なるほど、つまり自分の意見や要求をはっきり言うこと、そして結果を出すことがポイントなんですね。江村さんの話からも、仕事もプライベートも同じだなって感じます。
江村: そうですね。察してもらうのを期待するだけではなく、自分からしっかり伝えて、結果を出すことが大事ですね(笑)。
江村さんのキャリアや経営に関するお話は、本当に刺激的で、参加者の皆さんにも大きなインスピレーションを与えたことでしょう。特に、「悩む」よりも「どうやって解決するか」を考える姿勢には、多くの女性が今日から参考にできるポイントですね。
プライベートの話題、特にパートナーシップについての江村さんの考え方も、興味深かったですね。結婚に対する具体的な考えや、パートナーに対して明確に期待を伝えることの大切さは、仕事にもプライベートにも役立つアドバイスです。
この勉強会レポートが、参加者の皆さんが自分のキャリアや人生を見つめ直す良いきっかけとなり、江村さんのように自分の道を切り開く力を持って進んでいけることを願っています。次回の記事でも、また新たな学びが待っていますので、楽しみにしていてくださいね!
ライター | 経歴 |
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![]() 鈴木 | 株式会社パーソナルナビ メディア事業部。 『THE CAREER』ライター。 国立大学医学部にて看護学を学んだものの、医療と違う道を選ぶ。営業と人事採用の経験を活かし、キャリアに関する情報を発信。 |
【会社名】
SSパートナーズ株式会社
【事業内容】
航空機レンタル事業
【代表氏名】
江村 林香
【代表経歴】
1968年、埼玉県生まれ。株式会社エアトランセ代表取締役社長。1988年、東洋大学短期大学卒業後、タクシー・ハイヤー旅行業のキャブステーションに入社。独自の発想力と企画力が認められ、1996年に取締役に就任。その後、次々に社内ベンチャーを立ち上げ、音楽家派遣業の「エルパ」と都心の観光ハイヤー会社「アウトドアテクノロジー(アウテック)」で代表取締役を、タクシー・バス会社支援事業の「ヒューマンビークル」で取締役に就任。また2002年に「にわとりの頭の学校(起業塾)」を立ち上げる。2004年8月、これまでの役職をすべて辞し、北海道を基盤にするコミューター航空会社「エアシェンペクス」を引き継ぐ。同社を株式会社エアトランセとして再スタートさせ現職に。
【本社所在地】
〒160-0022
東京都新宿区新宿1-6-8
【企業HP】
https://www.airtransse.com/