蒲原 寧社長「全ての人がワクワクできる社会へ!」|“想像”を現実に変え続けてきた経営者のキャリアに密着

2023年9月20日に銀座で開催された『上場企業特別講義~トップ経営者が語る光(成功)と影(ハードシングス)~』。

今回は、盛況だった講義当日の様子をレポートします。


今回のゲストは、サインポスト株式会社、代表取締役社長の蒲原 寧(かんばら やすし)さん。“道しるべ”という意味が込められたサインポスト株式会社は、2007年に創業され今年で17期目を迎える。2017年には「東証マザーズ(現在:グロース市場)」へ株式上場。その2年後の2019年には「東証一部(現在:プライム市場)」への上場を遂げている。

受託開発ソフトウェア業を主力とするサインポスト株式会社。事業成功の秘密はどこにあるのか、エネルギーの源は何か、ファシリテーターの漆沢祐樹(株式会社パーソナルナビ代表取締役社長)が対談形式で蒲原社長のキャリアについて話を伺った。

01 Start up
~創業のきっかけ~

会社設立前は大手銀行のシステム部で優秀な功績を残されていた蒲原さんに「なぜ銀行員として成功していたキャリアを手放してまで起業の道を選んだのか」その真相について質問すると、「39歳の時に天命が降りてきた。」と意外な回答が返ってきました。

「自分の残りの人生について考えたときに“世の中に新しい事業を創ることで経済面からこの国の発展を支えることができるのではないか”ということを考えました。私は、人生は自分の生きている意味や使命を全うするものだと思っているので、41歳でサラリーマンではなく起業の道を選びました。

でも実は、最後に創業の選択の背中を押してくれたのは私の奥さんです。勤めていた銀行を辞めるという情報が広まった時に多方面から良い条件でのアプローチがあり正直少し悩んでいました。そんな時「でもそれは、あなたのやりたいことではないでしょ?」という言葉をかけられ決意が固まりました。この先どう転ぶかわからない道を応援してくれた奥さんにはとても感謝しています。

私は少し変わっているタイプで、“想いや理念”から挑戦する事業を決定していきました。弊社で言えば『孫の代まで、豊かな日本を創る一翼を担う』を創業理念として掲げています。

この理念を軸にして始めたのが、「コンサルティング業」「イノベーション事業」「DX・地方共創事業」の3つの事業です。

コンサルティング事業では、最後をお客さん任せにするのではなく、最後の実行までをサポートするのがサインポストの強みです。イノベーション事業では、独自のAI事業を開発し、人手不足の解消と、消費者の方のレジ待ち時間の削減を実現しています。DX・地方共創事業では、デジタル技術を活用して地方のさらなる活性化の支援などをしています。」

大きなキャリアチェンジを決断し、理念を大切にする蒲原さんの“日本の発展を支えたい”という熱い想いが伝わってくるお話を伺えました。

02 Growth
~会社の成長ポイント~

一般の企業ではなかなか難しい上場を成し遂げた蒲原さんに、漆沢が会社成長の秘訣について尋ねました。

「会社成長のポイントは『理念』だと思っています。理念は社内に浸透させることが大切で弊社でも普段から意識しています。

企業理念一つ目に掲げている「社会に新たな価値を創出し続ける」では、他の企業がやっていることを真似しても意味がないので、“それは本当に新しいのか”という視点を社内会議でも常に持ちながら新しい事業を考案しています。

二つ目の「お客さまと社会に感謝される仕事を」は、法人も個人も自己中心的な考えは長続きはしないという考えの基に生まれた理念です。弊社の人事評価基準の一つを“お客さまからの感謝の言葉の数”にしているほど、お客さまからの感謝の声というのはとても大切にしています。

三つ目の「社員が仕事を通じて成長するのを支援し社員とその家族を幸せに」では、1日のゴールデンタイム(9時~18時)を捧げて働いてくれている社員とその家族を、仕事の成長を通じて幸せにしたいと思いこの企業理念を設定しました。

経営判断や顧客応対は、三つの企業理念に合致するかどうかという視点で話合うことを徹底しています。この観点をもつことが企業長のポイントです。」

漆沢からの「経営をする上で、利益と感謝はどちらの方が重視しているか?」という質問に対して蒲原さんは「お客さまに喜んでいただいた結果として、利益が生まれる」と経営においての感謝と利益は前後関係で成り立っていると答えていました。

03 Hard things
~経営者としての一番の壁~

同じ経営者でもある漆沢が経営者として一番大変なことは何かと尋ねると、「レベルを落とさないために自分自身と闘い続けること」だとトップとしての覚悟と責任について語ってくれました。

「サインポストのメイン事業に追跡・商品認識・紐づけの機能を駆使した“無人レジ”のサービスがあります。これは起業当初からの『くだらないレジ待ちの時間をなくそう』というビジネスモデルの基に生まれ、カメラも0からの開発でした。

私の最終目標は“手品ではなく魔法レベル”でした。せっかく作るのなら、すぐに仕組みが分かるものよりも、「これはどうなっているんだろう」と思ってもらえるような魔法レベルの製品を開発したいじゃないですか。まだ世界にないものを創ることはもちろん大変なことで、社員もモチベーションの維持に苦労したと思います。ただ私は、0から何かを創るときは妥協を許さないことが大切だと思っているので、常に自分自身にも厳しく、社員にも厳しく走り続けました。レベルを落とさないためには、孤独になってでもトップが上を目指し続ける必要があると思っています。

お客様や会社など誰かの生活を便利にするために、今までに無かったものを作ることが銀行員の頃から好きでした。基本的には、社員のアイデアで進めていきますが、社員が困っているときは自分も知恵を絞って一緒になって事業を作り上げています。」


アイデアが実現できなかった時のメンタルの維持について漆沢が聞くと、蒲原さんは「落ち込むこともあるが自分を勇気づけるしかない」と前向きな表情で答えました。

「『成功の反対は目標なく生きること』だと私は思っています。人は目標がないと成功したかどうかさえ分からないですが、目標が高ければ高いほどたくさんの失敗を経験します。なので、成功の反対は失敗ではありません。

最終目標さえぶれなければ、それに向かって走り続けるだけなので、失敗しても自分を勇気づけて頑張るしかありません。」

そう語る蒲原さんが業績面で大きな壁に直面したのは、会社を設立した2年目の10月だったと言います。

「会社が軌道に乗り始めたところでリーマンショックが起き、売り上げが三分の一に落ち込みました。さすがに倒産の危機も感じ、転職先リストを社員全員分作成したこともありました。

その時期に、一度だけボーナスを通常2ヶ月分のところを1ヶ月分にしてしまいましたが、諦めずになんとか最悪な状況を乗り越え、17期目でボーナスを削ったのはその1度だけというのが小さな自慢です。」と少し笑いながら当時を振り返っていました。

04 Vision
~会社の未来について~

会社の未来や構想について尋ねると、蒲原さんは9年前に作り上げた企業紹介動画と共に「2030年までに日本を代表する企業になる」という現在の目標について熱く語ってくれました。

「サインポストは2030年までに日本を代表する企業になることを決めてます。その具体的な内容としては、営業利益を数百憶円にすること、お客様の感謝の声を一般商社まで広げていくこと、事業のグローバル展開を目指すことです。

この目標を達成するためにたくさんのキャッシュも投資しているので、今の業績は3期連続赤字ですが財務的には何も影響はないと考えています。“今やらないと他に負ける”という強気な気持ちで、赤字を恐れず目標に向かって挑戦をし続けています。

一番恐れるべきは時流を逃すことです。『女神に後ろ髪はない』という言葉があるように、チャンスは目の前に来た時に掴むしかないという単純なことを徹底しています。」

サインポストの企業紹介動画が会場に流れると会場は拍手に包まれました。ワクワクした感情を生みだすことができるのは「過去の経験」と「未来を見せること」。言葉で何度も伝えるよりも夢のある未来を映像として見せることで、社員の脳が活性化されより強いチームに成長すると蒲原さんは笑顔で話していました。

05 Message
~20代・30代の方へ~

最後にキャリアに悩む若者への応援メッセージとして、「Z世代であるという価値を大切にし、自信をもつことが重要」だと語ってくれました。

「Z世代やデジタルネイティブ世代の皆さんは、ぜひ自分に自信をもってもらいたいと思います。2年後の日本の生産労働人口の半分がZ世代になるといわれています。これはつまり、消費活動の半分を占めるZ世代の価値観に添うビジネスをしないとものが売れなくなるということを意味しています。

また、働き手もZ世代が多くなるので、その世代に合わせた組織改革やサービスを検討しないことには企業としても衰退する状況が生まれるわけです。このような背景からも、Z世代の方々は自分たちの価値にもっと自信をもつべきです。

自信をもったうえで夢をもってくださいその夢は、誰かに言う必要もありません。大切なのは自分の夢を書き出して毎日見ること。そうすると夢は必ず実現します。毎日見ることによって人は惰性に走らなくなります。自分を奮い立たせるエネルギー源だと思って実行してみてください。私自身もそうやって一つ一つの夢を叶えてきました。」

サインポスト株式会社では、Z世代の価値観や視点を活かすための『Zの会』という若手社員のプロジェクトチームを結成している。「サービス」と「会社をこうしたい」という2つのテーマで、月に一度考えた案を蒲原さんに報告する制度を実施しています。蒲原さん監修の基、採用された案は実際に会社に取り入れられ、サービスの実現化も進めるそうです。会社の進歩のために新しい価値観を積極的に取り入れる企業で働くことによって、自分自身の価値を高めるチャンスも広がるのではないでしょうか。

toyoshima

インタビュアー 兼 ライター

株式会社パーソナルナビ メディア事業部。
四年制大学の教育学部を卒業後、都内小学校に勤務。
退職後は教育者の経験を活かし、20代~30代を中心にキャリアアップ支援事業を行う現職に就く。

会社概要

【会社名】
サインポスト株式会社

【事業内容】
コンサルティング事業/イノベーション事業/DX・地方共創事業

【代表氏名】 
蒲原 寧(かんばら やすし)

【代表経歴】
1965年生まれ。大阪府出身。
1988年、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。最先端の技術を駆使した次期システムの構築や、三菱東京UFJ銀行の合併に伴うシステム統合などの大型プロジェクトを手掛ける。
2007年にサインポスト株式会社を設立し、代表取締役に就任。
2011年には、大規模金融システムの開発現場を描いたフィクション小説『プロジェクトマネージャー』(ダイヤモンド社)を上梓。
その他取材協力として『銀行システム入門 〜銀行経営者とCIOが知っておくべき銀行システムの基礎知識〜』(キャリア教育出版)がある。

【本社所在地】
103-0023
東京都中央区日本橋本町4-12-20 PMO日本橋本町6F

【企業HP】
https://signpost.co.jp/

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